遠ざかる    瀬間陽子
 
  わかりやすい恋をしている潮干狩  
  つばくらめ未来しかないチューブ細る 
  しあわせという蝙蝠の微香なり
  弟の髪こうばしく糸蜻蛉
  ソフトクリーム小銭の音のやさしかり
  ともだちをことりと憎む秋の虹
  家路ふとよごれた鹿の遠ざかる
  痛くない嘘のからまる冬かもめ
  空うごく鴨はあかるい土手になる
  湯たんぽのむかしむかしの波を抱く




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