かけら             
   守谷茂泰    

刃を呑んだ顔で真冬の月昇る
耳とはなんのかけらであろう鳥帰る
檸檬ひとつ置いて明日を遠くする
船員の匙の上なる狐火や
冬林檎異国語なぞるように剥く
種よりもわれは縮んで虫の闇
裸木はねむりぐすりを持ち歩く
街を抜け木枯だけが汚れない
枯山を少年擬餌のごとく行く
寒薔薇雨はひと粒ずつ錆びて


豆の木no.4indexへトップページへ
inserted by FC2 system