<王>の耳
小野裕三
寒月や幽霊船に百の歌
二ン月の海唇に近くあり
春の夢何万トンの空だろう
夏の雲綺麗な磁石墜ちてゆく
夕焼けは彼方ニューヨーク大空襲
この海の黙約われら被爆国
満月に命令形の地雷群
冬帽よわたくしの好きな体温
帝政が始まる月光のバス通り
<王>
(ケーニッヒ
)の耳ひとつ多し神無月
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