遙か
矢羽野智津子
釘抜きに釘折れ曲り三鬼の忌
蝌蚪生れて都会に空家増えてゐる
竹皮を脱ぐこころざし遥かなり
アマリリス淡く透けゐる肩の紐
外燈のなかなか暮れず星祭
膝の骨なりて夜店の亀つかむ
クーラーにドナーカードの冷えてゐる
爽やかや土手のやうなる人とゐて
椅子と椅子抱き合はされ残る虫
一点に用紙の角を合はせ冬
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