矢羽野智津子
コッペパンはクジラの背中のどかなり
魚は氷に悔し涙の美しき
吉田悦花
石段のひとつずれたる紅椿
病院裏のバスケットコート黄水仙
岡田由季
春光に婚姻色の鵜の頭
扁額の文字を解読蛙鳴く
こしのゆみこ
魚島をふむぬきあしやさしあしや
魚島へつきおとされてくすぐったい
しまいちろう
懐手解いてその他大勢になる
老人は老人避けて朧行く
田中信克
あの世にはあの世の噂桜騒
紫木蓮すこし疲れて愛その他
東濃誠
青を研ぐその触覚は初蝶の
春の夜の書棚の奥の深海魚
鳥山由貴子
春寒のブランコ鳥籠のなかに
薬局の鍵つきの棚春の雷
中内火星
なにごとも中途半端に万愚節
恋も終え香箱座りする路地猫
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