大石雄鬼
のらくろの影ものらくろ冬晴るる
冬ざれや無声映画のみな早足
小野裕三
凧すっと中華人民共和国
グラジオラス人民服に浅き皺
河口夏実
サボテンに花咲いた年惜しみけり
如雨露に雨水たまる初雀
こしのゆみこ
大空の袋が破れ白鳥来
失恋の国は満員ひなたぼこ
小林 檀
白鳥の来てをり問題後回し
擦り傷を山眠る間につくりをり
齋藤朝比古
雪催きゆつと鏡の己拭く
端子から端子へコード冬ざるる
峠谷 清弘
中年やオリオンの如き片思い
星冴えて胸には無人の坂があり
とみた土筆
初氷少年の視線まっすぐ
指きりの手のほどけてゆく冬の海
中嶋憲武
恋語る少女湯冷めの鼻並べ
蕪村忌や丘より見ゆる民家の灯
宮本 佳世乃
恋人の顔に果てあり置炬燵
初霜をたどれば鬼の住みかかな
矢羽野智津子
湯たんぽや寄生虫ゐる中学生
アコーディオン置くとき音の出て小春
吉田悦花
ふゆあをぞら白樺林に迷ひたし
俳人は貧乏が良し冬小雨
殖栗 歩
耳に骨集まつてゐる花八手
脱力の足もて逃げる真鴨かな
岡田由季
ボーリングピンのもたもた冬ぬくし
甥姪のつむじ見てゐる二日かな