2月の競作

河口夏実
日脚伸ぶ耳の形は母に似て
きさらぎの薔薇まで食べるチャップリン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

こしのゆみこ
龍の玉あたって猫の耳なくなる
葉ぼたんの晴れつづきたる「阿部一族」

小林　檀
「ラヴ」の文字打ち出すほどに冷えにけり
みぢん切りの野菜山盛りヴァレンタインデー

齋藤朝比古
きさらぎや風邪のぶつかる喉仏
北窓を開きて父の錆び始む

高橋洋子
ちゃんちゃんこ黄色いワルツ踊ってる
きさらぎの黒板樅の森のやう

峠谷　清弘

日脚伸ぶ君の笑顔はキスのよう
石蕗の花来るはずのない手紙待つ

夏谷　胡桃
雪だるま僕の旅に終わりがない
冬三日月つれて急いで宅配ピザ

矢羽野智津子
誰にもあるゴッホの耳や雪の夜
青空が逃げてゆくなり柳葉魚焼く

吉田悦花
白障子うらに竜宮ありにけり　　　　
気に入らぬ著者近影よ寒の入

殖栗　歩
綿虫の追ふような追はれるやうな
バスがバス追ひこしてゆく春隣

上野葉月
耳元で碧梧桐忌ですとつぶやく
春隣り大福みたいなお嬢さん

遠藤　治
マフラーを巻いてから出す黒き髪
すこし距離置いてみたくて風邪をひく

岡田由季
年の豆ノンストップで数へをり
ピノキオの直立不動春隣