齋藤 朝比古
白南風やかんかん鰹節売られ
ぽつねんとスタンドマイク終戦日
高橋洋子
赤のままくつしたのなかまであまつぶ
星とぶとぶとぶ鰐が描きたい鰐
田島 健一
静かな優勝遠くへ遠くへあぶらぜみ
跳び跳べ虹のシマウマは昼見つめいる
月野ぽぽな
夏の果ランタン灯すように和音
闇の湧く汐の名の星桑の実や
とみた土筆
向き合いて入道雲の空のした
あいづちや遠くに花火子の手柄
中嶋憲武
風呂上がりの裸のとほり過ぎし居間
シャワー浴ぶまづてのひらを差し出して
宮本佳世乃
ボサノバに大夕焼の濃かりけり
金魚玉何か欠けたる者集ふ
西原天気
化粧して冷やし中華のやうな顔
銀河濃くなり調教のするされる
矢羽野智津子
喫茶店鏡の奥もパリー祭
風鈴や銀座の夜の文具店
吉田悦花
神田三省堂書店バナナ匂ふ
のうぜん花オタクの街の秋葉原
井上広美
胸中になゐ金雀枝は散りやすし
ほゝづきの萼より透けてあはれなり
上野葉月
氷菓子椅子落ちつかぬ石畳
人妻の蓋然性の土用波
遠藤治
幽霊もゐたる精神世界かな
妖怪に似てゐる蘭の名前かな
太田うさぎ
七夕や零れて光る餡の粒
彼ともども夕張メロン上京す
岡田由季
青蘆原にちょうどサイズの合うわたし
空蝉に拒否されているパスワード
河口夏実
青畳かなぶんぶんの子の着地
かなかなや耳の形は母に似て
こしのゆみこ
母の黙百合の顔していたりけり
夕端居している父に並ぶかな