中嶋憲武
残照の塔あり月の欠けはじむ
ひぐらしのひと鳴きのたび暮れにけり
西原天気
煎餅の肌のでこぼこ都民の日
枝豆がころり原稿用紙の目
前野子壱
たそかれに奥ゆきのある蕎麦の花
剥がれ来て芋虫やわらかくもがく
宮本佳世乃
全身の楽器になりし星月夜
鰐口に石ぶつけたし秋高し
矢羽野智津子
今日履きてこの靴捨てる小鳥来る
秋海棠囲はれ者のごとく垂れ
吉田悦花
ひとりづつベンチ仕切られ秋の暮
音のなき監視カメラや秋の暮
井上広美
野蒜摘みし土手の高さよ母の背よ
オレンジの封筒がくれた旋風
上野葉月
空手着の少女の踊る秋祭
東京メトロの看板青く秋の暮
岡田由季
成長の痛みはなくて貝割菜
秋祭ところどころにクラスの子
河口夏実
相席の人と鴨南初時雨
蓑虫や晴れて水車の回りだす
こしのゆみこ
からっぽの梯子がひとつ曼珠沙華
台風のところかまわず蓋開ける
齋藤 朝比古
シマウマの影に縞なき秋彼岸
月白の道やはらかくありにけり
高橋洋子
十月の恐竜展へおとな一枚
野のコスモス小さい腸詰の一種
秋日和ぼくはパンツもドラえもん
しどけない俺しどけない星走る
峠谷 清広
ピアノより流れる川や曼殊沙華
無花果や黒板の裏は風ばかり