◇◆◇◆8月の競作◇◆

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齋藤 朝比古
うなだるるかたちに老いし蝿叩
片陰のつづき成人映画館



さいばら天気
をんなにもうすら髭あり夜の桃
暗黒の宇宙におならひとつ鳴る



高橋 洋子
八月の掌のなかにある石の鳥
南瓜煮てわたくし遠くへゆきたし



月野ぽぽな

遠目にもフォルクスワーゲン青田波
靴紐を結べないから海月です



峠谷清広
背の高い男沈没土用波
輪投げする少年と母夏木立



前野子壱
紫陽花の水色海に渡すころ
青き庭より拾はれし青林檎



宮本佳世乃
口を開かず団扇風送りをり
つなぐための左手となる戻り梅雨



矢羽野智津子
寺涼し非常口などなかりけり
色弱と言はれし頃の捕虫網



吉田悦花
だんだんとけもののにほひ雲の峰
魂棚の裏へまはりし白き猫



上野葉月
校庭を何週もして石灼ける
黒々と銀河流るる睫かな



遠藤治
海の日や高まつてゆく古時計
蚊のあとも愛のしるしのひとつかな



大石雄鬼
押し入れが光に汚れ多佳子の忌
ビキニ環礁からの汗あり後頭部



岡田由季

遠くから来たやう沙羅の花ひらく
尺取のその場その場で困りをり



小林檀
砂山の頂き壊し雨蛙
手のひらを返してしまふ暑さかな



こしのゆみこ
半身が蝉になるほど泣いており
いもうととくぐる蜘蛛の囲の頑丈




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