上野葉月
コスモスや保健委員の議論好き
牛乳を飲めと言われて鳳仙花
遠藤 治
秋の日の進化の果ての木魚かな
入れものの母に似てゐる夜半の秋
大石雄鬼
母子手帳の表紙べたつく盆の月
縦に皿干され猪深くねむる
岡田由季
日本と知つてか茸生えてくる
時代祭の牛車を追つて行つたきり
加茂樹
あまつぶの幾百あきのきりんさう
紅葉且つ散る鉄工場昼餉時
河口夏実
楽団員楽器を運ぶ落葉かな
湧きだして清らかな水一茶の忌
こしのゆみこ
蜻蛉のつっととまって口ぬぐう
偏見かもしれない鰯雲は鳴る
小林檀
鳥渡る人の作りし国境
もみづるや龍の降らせしからくれなゐ
齋藤朝比古
一畳は京の大きさちちろ虫
冬じたく部屋の一隅濃くありぬ
高橋洋子
赤飯など口からこぼす小六月
浮寝鳥いるはいるはいるはいるは
月野ぽぽな
結んでは解くユダヤの踊かな
秋祭アニスは星の匂いして
峠谷清広
秋刀魚喰いそして失踪したい昼
駅弁をアパートで喰う暮の秋
宮本佳世乃
台風が塩ラーメンとなりにけり
フォークダンス宇宙だんだん近づきぬ