こしのゆみこ
逃げ水のゆったり生家までつづく
ぼんぼんと人眠りたる春の昼
齋藤朝比古
喝采のやうに桜の降りつづく
猫の恋夜の白濁してきたり
高橋洋子
声嗄し映画になれよ海酸漿
麦秋のあおあおと泣く笠智衆
月野ぽぽな
目を閉じて桜月夜のウォシュレット
泉より泉でありしウォシュレット
峠谷清広
会社逃げ猫になりたい花の昼
少年の父は弱虫風車
前野子壱
花蕊やうさぎは不思議犬はお手
黄金に輝く蝦蟇の蝌蚪の紐
矢羽野 智津子
清明やスーツの似合ふ母なりし
渦巻の底しづかなり目借時
吉田悦花
反りかへるまつげ立夏となりにけり
パスポートのかほの別人はなごほり