矢羽野智津子
小春日の水を汚してゐる絵の具
工作室前のバケツや冬ざるる
吉田悦花
小春日や濁つてゐたる河馬の水
短日やなんでもかでもとんがらし
上野葉月
鮫の肌剥落したる冬の月
小麦粉にこだわりながら神渡
大石雄鬼
豊胸のごとき芒の活けてあり
冬近し港の縁はゴムである
岡田由季
玉子かけごはんの後の七五三
学校の時間にうごく冬の雲
川田由美子
紅葉だんだん近づいてくる水の音
低く拠る山霧足裏やわらかし
菊田一平
ホットレモン猫の寝息を聴いてをり
襤褸市の冬日にかざすトンボ玉
こしのゆみこ
着ぶくれてやっと水音なくなりぬ
はしっこのフックに父の冬帽子
齋藤朝比古
痛い木や痛くない木や冬深む
いくたびも指差して買ふ熊手かな
高橋洋子
みずいろのうえのみずいろ鳰
冬銀河橋わたるとき笑い上戸
月野ぽぽな
目に見えぬ白鳥を軸として街
梟のようにメニューを待っており