上野葉月
スペインの城立つ冬の砂場かな
饅頭の湯気思わず復讐を誓う
大石雄鬼
体温は高め鯨を喰うてをり
鉄人28号の目の錆びて雪
岡田由季
外套のをとこ登場一度だけ
義理の家族と入つてゐたる炬燵かな
菊田一平
モロッコの靴は金色年つまる
くつさめに揺らぎ東京タワーの灯
こしのゆみこ
家中に父がつくりし松飾り
ジャンパーから猫のたくさんでてきたる
齋藤朝比古
先生を芯におしくらまんぢゆうす
裸木のしはぶきめけるかたちかな
高橋洋子
歩くときすこしかたむく小正月
化粧して水鳥ぼんやりみている
月野ぽぽな
高階は和紙の静けさ冬深し
深海の砂のひとつぶ日記果つ
矢羽野智津子
つまみたる十円まんじゆう冬ぬくし
極月の脳を動かすチョコレート
吉田悦花
にんげんも絶滅危惧種初明り
白鳥のまへ湯冷してゐる心地