９月の競作

月野ぽぽな
OMIYA(大宮)もOLYMPIA(オリンピア)も秋果の響き
新蕎麦の歯触り本をつくる人

峠谷清広
晩夏光猫になりたい子供達
読まれない遺書の顔して秋暑し

中嶋憲武
ボウリングの球の加速や獺祭忌
八月や金管楽器群ぎらり

日高玲
新涼や透明ファイルの傾れ　　　
茅花流し鳥のいる木を知る少女　　

矢羽野智津子
青空に音量のなき秋の風
体内に風の管あり虫の夜

吉田悦花
夏の月すこしずれたる絆創膏
陶枕の吸ひつくしたるぼんのくぼ

吉野秀彦
新涼やアンパン二つ買い足して
熱波来て朝顔にある突然死

上野葉月
噴水あびる子供たちの駅前
生きのびるかたち背高泡立草

岡田由季
夏帽の待つ五分後のイルカショー
筆箱の匂ひの甘し夏ゆふべ

菊田一平
仙北郡仙北町の胡瓜漬
はるかまで枝垂れ桜の葉の茂り

こしのゆみこ
秋の蝉突然胸にくっつきぬ
タクシーの後ろの窓の大花火

近恵
七輪に黒焦げのもの涼新た
赤べこの揺れ止んでをり休暇明