吉田悦花薔薇のなか体温計を振りもどす
大茅の輪うしろの闇に抱きつかれ
吉野秀彦
風青し非常階段降りにけり
額の花やはり地球はさみしいか
上野葉月若鮎と異なるものを掴みけり
図書館の七月黄色いワンピース
岡田由季
貯金箱一円ばかり夕焼雲
蟷螂の転がるやうに生まれをり
こしのゆみこ
洗濯の渦に緑雨をのみこめり
ボールペンの掠れかげんに白き鷺
近恵
蛇口緩し守宮よ君もひとりかい
網戸より無理矢理はがし甲虫
齋藤朝比古
腰に手をまはすダンスや夏の星
なめくぢら苦しむふりをしてゐたる
高橋洋子
とほまわりして海月みにゆく約束
横山エンタツのやうにからすうり
月野ぽぽな
パフェの底に朱夏のスプーン届かない
電源を切って短夜に浮かぶ
星力馬
妻の不機嫌あぢさゐのあかむらさき
白靴と黒猫浜の煙草店
前野子壱
押しあひて左肩より梅雨に入る
モカコーヒー品薄になり渦紫陽花
矢羽野智津子初蛍闇透明になつてきし
厨の灯消して麦茶を冷ましけり
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