吉野秀彦
雲踏むか去年今年の真ん中辺
都会はのっぺらぼう ざっくりと時雨
上野葉月
波打際にあれば千鳥を求めおり
牡蠣鍋や私が上でいいかしら
遠藤治
おほいなる年の瀬といふふくろもの
太鼓鳴る本堂金輪際師走
岡田由季
ひなたぼこ母カンガルー子カンガルー
セーターの青図書館に探しをり
こしのゆみこ
賀状ゆく印度航路の波静か
湖の片側ばかり白鳥来
近恵
クリスマスケーキの上の無風なり
煤払あの世の底をこすりけり
齋藤朝比古
引つぱりて離れてゆきぬ毛糸玉
水鳥の濡らさぬところありにけり
高橋洋子
綾取りの山間の月お正月
一月のきっと雨が降るともだち
矢羽野智津子
どの部屋も南向きなり蕪村の忌
掃除機の何か吸ふ音クリスマス
吉田悦花
冬深し眼鏡を拭ふピアニスト
おほきなひとの大きな柩霜夜かな