高橋洋子掌のひらの糸屑あふれ鬼やらひ
バレンタインタコ焼きのタコかたいタコ
矢羽野智津子
自らを時々嗅いで裘
ロッカーの上にブーツの折れ曲る
枯蓮の昏きところへ鳥の息
薪ストーブかこみ抗がん剤のこと
吉野秀彦
腕擦る会釈の向こう春野かな
みどり児の触れてすべては春の色
上野葉月
日時計の森に狸の一家かな
一月の岸辺に足を洗いけり
遠藤治
ふくよかなハンガーふくよかなコート
消すときは懐手する組織かな
岡田由季
目玉焼に蓋一分間深雪晴
マスクより時々指示を出してをり
こしのゆみこ
娘より母のはなやぐぼたん雪
雪の夜の渡り廊下の果てしなく
齊藤朝比古
飛ぶ鳥と地を行く鳥と浮寝鳥
雑巾が廊下走りて冬の梅
しまいちろう
春大根ぐさっと斬って息ゆたか
春星や魔法使いに弟子入りす
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