上野葉月
こでまりの花咲く恋の金庫番
春深しなんだかずるい食堂車
岡田由季
鐘の音の薄るるあたりつくしんぼ
芽吹きをり川ぎりぎりのテレビ局
こしのゆみこ
ピアノごと桜吹雪にさらわるる
声殺し銀の桜の咲きにけり
近恵
地に眠るひと春暁の歌舞伎町
真夜中のふらここに腰掛けてゐる
齊藤朝比古
桃の花黒き電話の鳴つてをり
しつとりと雲の流るる辛夷かな
しまいちろう春光のとび跳ねている金庫かな
実家への二つのルート遅日かな
高橋洋子
春眠の納豆菌とか乳酸菌
おぼろ夜の舌にころがる金平糖
矢羽野智津子
黒々とこぼれさうなる子馬の瞳
養花天背広にかぶるヘルメット
春宵の爪の先まで濡れてをり
殺すなかれ殺させるなかれ春疾風
吉野秀彦
野良猫の命のかたち春の闇
風生まれ風の色なる風車
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