近恵
東京が出っぱっている春愁
鋤かつぐひと春光へもぐり行く
齋藤朝比古
料峭や木の削られて木の匂ひ
かげろふのかなた川崎重工業
高橋洋子
レヴィ・ストロースの庭すずかけの花
亀鳴けりなぜロシア語講座なのか
吉田悦花
春水にひたひたひたすものもらひ
種袋ふつて羽搏きともちがふ
吉野秀彦
ザビエルは偽宣教師万愚節
飯館の言葉に余る芽吹きかな
矢羽野智津子
印鑑に体重のせて鳥曇
鳥交る島の住所の東京都
上野葉月
駄犬とも判じにくくて春の虹
ウルトラの妹にょっきり俳句棒
遠藤治
風水や火だるまにして目刺焼く
心臓が白木蓮のごと錆びる
岡田由季
朧夜の臍まで垂るるネックレス
川崎の地下も地上も朧なる
こしのゆみこ
目印の木にあつまりて入学す
だれかさん暮らしたような倉の春
古城いつも
雀の子飢ゑたくなくば聞き逃せ
土曜日の春蘭とははた人の名か
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