吉野秀彦
路線図を見ている妻の日永かな
体重計はじっこにある花の宿
矢羽野智津子
球体のどこから夏が始まりぬ
もつたりと風をとどめて朴の花
上野葉月
狐耳もふもふもふとしたい初夏
夏足袋やしかられてから考える
遠藤治
仇討の坂ひらひらと夏帽子
枇杷をとる手頃な二階ありにけり
岡田由季
しやつくりのなかなか止まず菖蒲園
自転車の行きも帰りも鳧の鳴く
こしのゆみこ
潮干狩海は静かにしていたる
暑いので像の後ろにまわるかな
古城いつも
日蝕の間際の天啓夏はじめ
薔薇描けぬ母はいつもの庭仕事
近恵
ほうたるに近付いてゆく膝がしら
旗を振るようにことわられて薄暑
齋藤朝比古
すれ違ふ小さき電車風薫る
夏めくやベンチはなべて水に向き
吉田悦花
長嶋と王の手形よ花は葉に
薔薇の香にすこし邪心のありにけり
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