遠藤治
雪吊のゆるさを神の証しとす
寒空も神域にして昼の月
岡田由季
加湿器と犬の寝息や年守る
焼肉と決めて恵方へ歩き出す
こしのゆみこ
岬までゆくバスに乗り初詣
優しい人が寒がっている湖
近恵
佐保姫の足跡に水湧いている
王となる日まで炬燵に足入れて
齋藤朝比古
日向ぼこ夢路いとしのやうにゐる
混沌のラガーひとひらづつ剥がす
高橋洋子
春遠方へもめん糸ししゅう糸
靴ひもをしめる雪をただちに踏む
しまいちろう
マルクスの序説のごとき鼬(いたち)罠
心身の整ふまでのカイロかな
内藤 哲史
右側のドアを開けば二月の夜
糸電話春立つ刻を告げにけり
吉田悦花
月光を零しセーター脱いでをり
葉牡丹の渦少年期句集かな
吉野秀彦
調律は泉谷の勝手如月来
マスクして話を逸らす奴ばかり
矢羽野智津子
厚氷あきらめはじめかけてゐる
波平のコート正しく着こなして
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