齋藤朝比古
雑踏に朧の月を仰ぎけり
明るくてすこし暗くて桜かな
高橋洋子
鳥の恋ふくらんでいる映画館
朧夜の後部座席のねむる猫
しまいちろう
マラソンの列晴海通りより長し
フロントに春の闇ある旅館かな
吉田悦花
三月の鏡のごとき硯かな
目刺の目ななめにそろふ夕かな
吉野秀彦
日本の一から十まで花だより
存在のほどよき間合い蛙鳴く
矢羽野智津子
追伸の二枚にわたり夕桜
文字数に限りのありて目借時
上野葉月
桜貝如何なる大仏にも非ず
カステラのざらざら攻めてくる春眠
岡田由季
その下に制帽を脱ぐ花辛夷
好きな木の周りをかこみ蕗の薹
こしのゆみこ
目張り剥ぐ海おとなしくしていたる
助走して春泥いくつも飛び越える
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