矢羽野智津子
蛇穴に入りぬ小石の濡れてゐる
胡麻干してフラダンス教室通ひ
上野葉月
秋の雨グリンスカヤの赤い靴
名月がちょっと寂しい沼袋
岡田由季
前例が無いと言はれて花カンナ
記者団は紅葉且つ散る工場へ
こしのゆみこ
黄鶺鴒白鶺鴒の順に暮れ
小鳥来て手指が留守になっており
齋藤朝比古
石鹸は手に乗る形つづれさせ
へうたんの軋むことなきかたちかな
しまいちろう
菊人形恋はをろかといふけれど
お土産はエルヴィスの髪曼珠沙華
高橋 洋子
手も足も銀紙のやうすすきはら
水鳥へ地下鉄のザジまぎれたる
三宅桃子
からすうり少しうらぎる先生を
文鎮におさまっている銀河かな
吉田悦花
きちかう咲くや頭蓋骨矯正中
ひつそりとおとろへてゆく花野中
吉野秀彦
秋の暮レトルトレトルトルルルルル
新酒酌む祖父の忌日の無音かな
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