吉田悦花
夜濯のあひま素直になつてをり
「それは良い質問ですね」雲母虫
矢羽野智津子
濃紺といふ海の日のありにけり
遠雷や森が濃くなりはじめたる
吉野秀彦
泣きっ面に水族館の水海月
餌として目高続くアクアリウム
鷲巣正徳
夏野行く牧草の香の肺に満ち
空蟬の宇宙服のごと葉の先に
上野葉月
翡翠の岸辺にるんと立ちにけり
傘を買ふ箱に立秋住まわせて
岡田由季
箱舟の点呼に応へ雨蛙
雨乞いの中盤になり盛り上がる
片岡秀樹
人間は裏切る海月裏返る
水馬水との別れ話あり
キーヨ先生
あの女最後に見た街遠花火
リベラルが静かに蟻を踏み潰す
こしのゆみこ
青葉木菟明日の水を汲みにけり
園丁の麦藁帽（むぎわら）ほしくてたまらない
齋藤朝比古
よろづ屋の積み上げて夏帽子かな
アディショナルタイムの長し明易し
しまいちろう
ソーダ水すべては遠くなりゆける
無頼とは投げ出す命水羊羹
高橋 洋子
赤のままひとことで言うと乗り込む日
南瓜煮てこけしのやうにくらします
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