吉野秀彦
数式を眺めいるだけ蚯蚓鳴く
衿に刺す不確定賛意赤い羽根
石山昼妥
三角を畳み矩形の秋扇
泣くほどに赤の立ち来る唐辛子
上野葉月
よく見れば九月の粋なマンホール
和幼女の工場出荷時秋炬燵
岡田由季
前厄の人と歩きて薄紅葉
秋彼岸脱水中の洗濯機
片岡秀樹
天窓洞より覗き込む秋の空
秋の航禁漁区より奔る恋
キーヨ先生
人生に敗れ壁を見る夜長かな
友達がいない男に赤とんぼ
こしのゆみこ
さみしくて鶫のようにラスクたぶ
靴紐がほどけるほどける草ひばり
齋藤朝比古
茶箪笥に玻璃の引戸や夜半の秋
船に手を振つて色無き風の中
しまいちろう
下着泥棒の造りし花野かな
天高しまぐろのお皿回遊す
矢羽野智津子
中心のどこにもなくて花野かな
腕まはし足首まはし天高し
吉田悦花
河馬のごと押し寄せて来し阿波踊
漱石風付け髭のあり秋の風
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