吉田悦花
真夜中の檸檬たちまち火照りをり
父とゐて鯔のあふるる夜の川
吉野秀彦
海螺廻しはらたいらさんに五千点
労いつ労われつつ寒椿
上野葉月
埋火や寝落ちのやうに来世あり
梟の眼の中の温泉街
石
山昼妥
秋遍路両眼は提供予定
ホスチアを舐る晩秋椅子になる
岡田由季
冬日向餌を散らかす十姉妹
笹鳴を聞きつつ二級河川沿ひ
こしのゆみこ
夢殿を出たり入ったり十二月
セーターの袖をまくると空晴れる
齋藤朝比古
夜咄の口のゆつくり開きけり
吊革に手首を置きし聖夜かな
矢羽野智津子
四人部屋に四つのコップ冬の宿
鰤起し腰で下りゆく坂の町
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