矢羽野智津子
立春やタオルにしみて湯の匂ひ
春昼や眼科医の顔近すぎる
吉田悦花
善人も悪人も粉雪の中
二ン月の宙へシロナガスクジラ跳ね
吉野秀彦
体幹の歪みそのまま青き踏む
爪は春の泥の色髪染め屋の子
上野葉月
思い出の並走したる春炬燵
唐桟を重ねて東風をふところに
石
山昼妥
洗骨のお婆喋くる春の水
壺焼の殻と親父のハイライト
岡田由季
接岸のショック地獄の釜の蓋
春めけるこの角度から金閣寺
こしのゆみこ
いぬふぐり色にかわりし秘密基地
春の服夕刻だんだん近づくよ
しまいちろう
啓蟄の深く埋まりぬガラス片
踏絵踏むオランウータンの腹に顎
●
トップページに戻る●