こしのゆみこ
切り株にとんぼと私隣り合う
秋天のひとりで巡る地獄かな
齋藤朝比古
登高の雲おほらかにありにけり
象の背に当たりて落つる木の実かな
嵯峨根鈴子
かまきりのいつまで紙つてゐるつもり
あなだつてしらぬが穴のあかのまま
中内火星
どちらかと言うとピーマンの含み
わらわらと六足歩行秋の蜂
矢羽野智津子
かかえられ川を渡りし曼珠沙華
木琴を叩きたかつた月の夜
吉田悦花
一枚の欅テーブル水澄めり
秋うらら刺身ぶ厚き定食屋
吉野秀彦
霧の黒姫ちひろの机ただ広く
自販機の一段明るく野分くる
石山昼妥
秋草を薙ぎつつ刺殺されにけり
裂け石榴死ぬ事以外掠り傷
上野葉月
新酒かな赤い目をした生き物と
人肌の屋台を巡る野辺送り
岡田由季
豊かなる語彙の鸚鵡を肩に秋
処暑のみち道頓堀と交はりぬ
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