嵯峨根鈴子
並んでる愚直と斧とどつちする
みのむしのしらせか耳を出かかつて
中内火星
冬ざるる鼻の欠けた石膏像
言いそびれ横一線のすすき原
矢羽野智津子
炭酸の泡より小さく水引草
美術部の水の匂ひし虫の闇
吉田悦花
「ふるさと」を歌つて終る秋ゆふべ
透明な容器を返す秋の暮
吉野秀彦
順々に寒の音立て鍵の束
鎌鼬抱きしめ測る肺活量
石山昼妥
匿名の寄附色鳥はアンテナに
秋黴雨びんずる様を撫で回す
上野葉月
水源へ光を注ぐ神の旅
ただならぬ肉の圧力冬銀河
岡田由季
葛咲いてもぬけの殻のアジトかな
半地下のライブハウスの落花生
こしのゆみこ
湖の縁から月のあふれ出る
色鳥を縁取りにして小学校
齋藤朝比古
三叉路はむかしのかたち小六月
酉の市きらきら離ればなれかな
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