齋藤朝比古
姿見の裏の閑けさ春浅し
息入れて紙風船の軽さかな
嵯峨根鈴子
干潟かなチューブ搾ればなまぬるき
芝青む尾骶骨なら骨牌に
しまいちろう
ふらここや未完のままの詩に似たり
てらてらの黒き乳首や山笑う
矢羽野智津子
音源は水でありけり春来る
家中の闇は動かず春一番
吉田悦花
きさらぎの腹話術師の唇締まり
銀座チョコレート通りへ春ショール
吉野秀彦
夕暮れの光離さず花の兄
艶やかな通販カタログ春浅し
石山昼妥
霞草足して整ふほどのこと
春日傘回し呼び込む男運
上野葉月
蛤よ貝らしくあれ男なら
春眠の増える地平へはい熟女
岡田由季
春を待つ仮パスワードパスワード
春の闇緩衝材としてありぬ
こしのゆみこ
風やんで蝶をやどしておりにけり
いっせいに椿の落ちる青い空
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