石山昼妥
板摺に蕗迸る命あり
聖五月厩に空の飼葉桶
上野葉月
つきふねの烏丸通り寿湯
鶯の老いて人造湖満ちる
岡田由季
越境通学ところどころの菫濃し
はつなつを軽やかに跳ぶ行司かな
こしのゆみこ
明けやすき橋の真ん中まで急ぐ
愛の終わりのよう砂日傘たたむ
齋藤朝比古
列なしてどの蟻も前のめりかな
明易や吸取紙に淡き文字
嵯峨根鈴子
お妃は金魚の前髪切りそろへ
でばばうちやう匂ひ起こせばソーダ水
中内火星
ミサイルぽんぽん飛んでポンポンダリア
米艦防護あたしらみんなさくらんぼ
しまいちろう
青葉光鉛のをんな宙づりに
黒人のはがねのごとくダチュラ咲く
矢羽野智津子
猫舌の口内炎の白さかな
紙皿の天道虫を吹き払ふ
吉田悦花
小学校の机と椅子よ初夏のカフェ
大木の股より黒き蝶生るる
吉野秀彦
蟻の列長になる人なれぬ人
神谷町の駅に潜るや黒揚羽
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