矢羽野智津子
袖口の紐を結びて月の夜
眠られぬ鏡に映る虫の夜
吉田悦花
飛魚を炙つて梟カフェにゐる
ヴァイオリン提げてホテルへ盆の月
吉野秀彦
無造作に秋百合揺れる寺領かな
芋の子のくるくる逃げる客の椀
石山昼妥
旦那ならイノダコーヒや秋彼岸
身を焦がす為の脂を身に秋刀魚
上野葉月
土地の名へ唇濡らす残暑かな
美人鬼嫁VS海パン刑事南海の決戦
こしのゆみこ
月影が私の襞に入りこむ
マヨネーズノゴトキ雷雨ニハグレタル
岡田由季
昼顔を伝ひ情報漏れてゐる
情報はラジオからのみ朝曇
齋藤朝比古
種採の指のさらさらしてきたり
送り火の焦げある地べた暮れにけり
嵯峨根鈴子
而して律に子規忌の月上がる
いなづまが彫りだす頭蓋骨ふたつ
しまいちろう
母棲むは五十一階いわし雲
志ん朝も談志もかの世秋扇
中内火星
半情冬馬上下大地に秋日差
タンカーで盆踊する町内会
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