吉野秀彦
紅の千本鳥居鰯雲
秋の灯や鉄筆よりも父冷たい
上野葉月
秋風の筋道にをりボブカット
浄瑠璃の青き東へ鰯雲
岡田由季
秋の浜子連れ狼めく父子
虫の夜に滑り込みたる公用車
奇蹄
落花生のふりして涙もろきひと
月光の臀なめらかに河馬の鬱
こしのゆみこ
白桃の鳥がねむっているような
タンカーの上手にすべる秋入り日
齋藤朝比古
鬼灯を鳴らす良子と恵子かな
ゆるやかに外すひとつぶ黒葡萄
嵯峨根鈴子
酔芙蓉うすがみいちまいづつはがれ
かかと沈む暗黒舞踏ねこじやらし
しまいちろう
フアスナーの長き人妻秋の蝶
茶坊主を抱いて寝てをりラ・フランス
中内火星
野紺菊ミサイルの飛ぶ町となる
鳥渡る世界の野心知らぬまま
矢羽野智津子
かさぶたをかりかり食べる虫の闇
筋肉の色でありけり曼珠沙華
吉田悦花
ふたりして不道徳なる秋の昼
名画座の金柑いろの叙情かな
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