峠谷清広
誤解されやすい性格花粉症
若き日の恋の続きは春の夢
中内火星
あらかじめ水っぽくなるなめくじり
蜈蚣死ぬ養命酒飲む人のいて
矢羽野智津子
人去りしのち酸欠の夕桜
新聞を買ふやうになり豆の花
吉田悦花
夏兆すボールのかたちのハンバーグ
芭蕉翁のふくらむたもと蝌蚪生るる
吉野秀彦
誰も知らない魔女の恋文聖五月
姓は車名は柴又の蓬餅
上野葉月
良き人の耳へ一輪草のこと
花韮の白を新妻よく笑ふ
岡田由季
快諾のメールすぐ来る花の夜
特別な人に亀鳴く日のありぬ
こしのゆみこ
羊羹の倒れてきたる春の宵
逃げ水の太腿あたりまで来たる
齋藤朝比古
ふらここの高きところの錆びてをり
魚の血のゆらめいてゐて春の海
嵯峨根鈴子
遅日かな海馬ごつそり棄ててある
遺伝子の梯子外れて亀鳴いて
しまいちろう
穴掘りてその穴埋める聖五月
春風や九官鳥を固定する
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