吉田悦花
わたくしを一網打尽のハンモック
グランドピアノのやうな間取図薔薇真赤
吉野秀彦
ハスキーなアデルの歌ごえ青時雨
夏兆すローリング・ストーンズの開放絃
石山昼妥
水割りの水は水無瀬の螢の夜
雲の峰半月でなる鮨職人
上野葉月
凶鳥を銀となるまで煮込みけり
本当の季節重なり教えてあげる
岡田由季
下流から来た人と見る蛍かな
鐘楼を出入りしてをり夏の蝶
楠本奇蹄
いまはまだ風になるまへ黒揚羽
笑はれてしほからとんぼ歌丸逝く
こしのゆみこ
腕時計したまま入る天の川
階段を上る音する夏の月
齋藤朝比古
セキュリティカードを首に緑蔭へ
白南風やぴしやりぴしやりと化粧水
しまいちろう
劣情の赤きほほべた桜桃忌
そしてまた一人になりぬ夏大根
中内火星
大久保は風呂が安くて眉を引く
梅雨入して右へ傾く胃液かな
矢羽野智津子
テーラーの紫陽花淡き飾り窓
採尿の窓口小さし暑さかな
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