嵯峨根鈴子
曼殊沙華かかへきれない母の夢
秋風や麒麟に柄の凝縮す
しまいちろう
対岸は合衆国や秋の虹
体温計折り月光を掬いけり
峠谷清広
長き夜や時の審判待つ如し
過去の恋映画のような夜長かな
矢羽野智津子
母の掌の体温計よ虫の夜
虫鳴きてくすぐつてゐる闇の裾
吉田悦花
太刀魚のたいらなからだ丸の内
太刀魚の巻かれ巻かれて塩焼に
吉野秀彦
故郷は北に南に盆踊り
折り返す袖やカフスは月の色
石山昼妥
栗ごろり乳歯すぽりの栗御飯
竹の春聴導犬になる雑種
上野葉月
横顔に見つける龍の潜む淵
秋の日の四つの乳首持つ家畜
岡田由季
生き抜いて秋の金魚として泳ぐ
農道に行き倒れたる案山子かな
齋藤朝比古
月白の宝物殿の上を猫
悪声の鳥の来てをり一位の実
こしのゆみこ
満月のとくとくバルサミコ酢かな
体温計きゅっとはさんで一位の実
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