上野葉月
両手を使ひ縦縞セーター着る
移民かな寄り添ふだけの鮭の恋
岡田由季
金曜日どつと増えたる冬鴎
鴛鴦の長所ばかりを見てゐたり
楠本奇蹄
投げて散る二日の雪は二人称
初釜の水平線をゆくあをさ
こしのゆみこ
くらがりを泣きじゃくりたる虎落笛
遊びながらいつのまにやら冬眠す
齋藤朝比古
神鶏の声を彼方に風花す
いろいろの神を参りて福寿草
嵯峨根鈴子
荒星はバージンオイルでさつと炒り
泥炭にたださめざめと雪女郎
しまいちろう
巴里から一直線に初詣
元日の町にあふれし仁丹塔
峠谷清広
日脚伸ぶ再放送の時代劇
煤払また変な物発見す
中内火星
初日の出陰になりたる国会議事堂
お正月ゴジラのごとく三歳児
矢羽野智津子
さつきゐた子供きてゐる焚火の輪
ボールペン書ける書けない年の暮
吉田悦花
冬日射す神宮の杜鴉啼く
西郷どんの放つ薩摩の犬小春
吉野秀彦
己が身の病愛しき亥歳かな
骨壺に前うしろあり去年今年
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