峠谷清広
初恋の後日談語る日永かな
春の夜やマンガ読みつつウィスキー
中内火星
宇宙船アイドリングしたまま千年
よくぞ川まるで音する春の月
三宅桃子
ケーキ互いに寄りかからずに冴返る
新宿にきれいな空気猫柳
矢羽野智津子
紫外線浴びてをるなり春袷
声紋を濡らしてをりぬ春の雪
吉田悦花
骨董となりしキューピー春立てり
からつぽの電話ボックス猫の恋
吉野秀彦
体裁は辞職勧告桃の花
銅板の屋根の明るさ春の星
らふ亜沙弥
いつだってじらすのが好きヒヤシンス
骨盤のねじれ具合や桜草
石山昼妥
逆光のマルスを描く大試験
春水を流し続ける生簀かな
上野葉月
靴を脱ぎたゆんたゆんと蛤に
春ごとに物見る人となりにけり
岡田由季
きさらぎや文字を書くのに影が邪魔
脳内の使はぬ棚や冬すみれ
こしのゆみこ
指のついた靴下三寒四温かな
涅槃西風あぶらげ全員ゆきわたる
齋藤朝比古
春の雪多摩センターの駅三つ
病棟を出でて病棟牡丹の芽
しまいちろう
しら梅に朝の幽体離脱かな
梅咲くや電線音頭口ずさむ
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