三宅桃子
北のほうから青ぬたを配膳す
生もののように痛みし春の服
矢羽野智津子
怪獣を立たせてありぬ雛の壇
また一軒食パン専門店のどか
吉田悦花
初蝶来肩甲骨をひらくたび
大皿のポテトサラダよ春の空
吉野秀彦
角ぐむやフェンスの向こう装甲車
生きるとはうどん一本啜ること
石山昼妥
石鹸玉生まれ乍らに光りけり
暗算は指を動かし百千鳥
上野葉月
銀行に信頼されし春炬燵
花の雨清々しいほど勘違い
岡田由季
足の出て蝌蚪愛せなくなつてをり
才能は水に溶けますチューリップ
楠本奇蹄
花の夜の指に真水のあたたかさ
キスと云ふ砦ありけり花の夜
こしのゆみこ
縞馬の凹みにたまる春の雨
涅槃西風あぶらげ全員ゆきわたる
齋藤朝比古
卒業の光へ泣いてゐるひとり
三鬼忌の掌に白々と頭痛薬
峠谷清広
我が書斎小さな図書館春の月
思い出をつなぎ合わせる日永かな
中内火星
渋谷桜やびっくりするほどドアをしめ
死後の世界を忘れたように春の風
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