楠本奇蹄
とんかつに陽炎の立ち君を呼ぶ
鯛焼の吐息と化してあたたかし
こしのゆみこ
人間の魚の時代あたたかし
ひるがえるたびに夢みし背美鯨
齋藤朝比古
キャンパスに残るゲバ文字鳥雲に
石鹸の吊られし蛇口卒業す
しまいちろう
昼休み春泥付けて戻りけり
あいまいに告げられたるよ梅の花
中内火星
咳すればみんなが騒ぐ犬もなく
悪魔の誘いクルーズ船に魚雷
矢羽野智津子
のどかなり常設展に中二階
早梅や皿にあふるる猫の水
吉田悦花
ゆつくりとレタスを剥す十七歳
冴返る夜の探偵事務所かな
𠮷野秀彦
英哲の太鼓の連打山芽吹く
パイプオルガンの響きホールは春の闇
上野葉月
口内に化ける合図の桜餅
馬下げるシュレディンガーのパンツかな
岡田由季
春めいてきて鉄人の両手がグー
春いちご踵の少し不安定
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