こしのゆみこ
母方の睫は長き麒麟草
夏痩せの星になりたる地球かな
近恵
誰よりも小さな声のつゆきのこ
平熱の保たれている黒出目金
齋藤朝比古
洗はれて干されてゐたる帰省かな
草市におとなしきもの並びけり
しまいちろう
蟻地獄等間隔の孤独かな
コロナ禍の一人は気楽ところ天
中内火星
群青にしっぽり濡れる夜の虹
ソーダ水楽して心の鍛錬
矢羽野智津子
梅雨の庭いつもの父のつつかけで
不具合のごとく腹巻よじれをり
吉田悦花
万緑のなか眼底を覗かるる
持ち歩く消毒スプレー夏野かな
吉野秀彦
紫陽花や新築現場に灯がともる
方言を持たぬ淋しさ花ざくろ
上野葉月
鬼老ひてひとりの膝の月涼し
夏風邪や千にひとりは死ぬと云ふ
岡田由季
短夜の京も富岳も熱を吐く
東京の土産に小さき虹もらふ
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