吉田悦花
郵便の転送期間花の雨
地の塩となりたる櫻ふぶきかな
吉野秀彦
代田浮く圏央道の五霞あたり
百年の楠若葉とや月真上
上野葉月
翼龍のゆつくり廻る涅槃西風
北方領土の正直者に金の斧
岡田由季
元寇の頁に至り亀の鳴く
二種混ぜる接着剤の暮春かな
楠本奇蹄
空豆はからつぽで夜を使ひ終へ
白躑躅愛せば酸素奪ひあふ
こしのゆみこ
春服を着て夕焼にまぎれたる
朧夜の蛇口はきつく締めたはず
近恵
シャボン玉割れて酸素が薄くなる
名をつぶやく囀の真ん中にいて
齋藤朝比古
ぶつからずぶつかりさうに蝶二頭
花は葉に海賊版の地に売られ
しまいちろう
指先に酸素を測る春の暮
春暁にタバコくゆらすナースかな
高橋洋子
白い罌粟ウージェーヌ・イヨネスコうたたね
右腕がおぼろ紙飛行機さやうなら
中内火星
スカイセンサー5800ああ世界の闇よ
首もげた人形海と死について
三宅桃子
空高く水ようかんが喉すべる
巻き戻すように羽織ってアロハシャツ
矢羽野智津子
花の昼棘の見えない目になりぬ
朝桜もののついでの届け物
●
トップページに戻る●
