齋藤朝比古
ほがらかに道汚しゆく耕耘機
ひとつづつ黄泉へ近づく雛納
佐々木紺
発音のくぐもる熊や穴を出て
花吹雪みな黒幕になりたがる
しまいちろう
ヨウガスと膝叩く円生の朧
晩春のつま先に置く鉄亜鈴
高橋洋子
亜麻仁油のとかすみづいろ鳥ぐもり
花冷えのかたい升目に馬がゐる
中内火星
新しい光が見えぬ花鳥風月
ロシアより愛をこめてが間違える
矢羽野智津子
細長きポンパドールの長閑なり
黒猫ののそりのつそり花ミモザ
吉田悦花
春の夜キッチンに踏む黄の輪ゴム
わらび野や日本酪農発祥の地
岡田由季
戦争を図解してゐる春寒し
急行の止まらぬ駅の猫の恋
こしのゆみこ
枇杷うるる父のズボンを干す庭の
晩春のこだまを入れる鞄かな
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