佐々木紺
東京や雀の一割が蛤
龍の玉素数の群れを連れてゆく
しまいちろう
パリの地図を貼ってみるだけ十二月
宛名書くこともなくなり小六月
鳥山由貴子
甲虫標本箱氷片のようナフタリン
言い訳のよう晴れているのに雪が降る
中内火星
ひび割れが空からわたしを襲う
そっくりなやつに会った向こうがおれかも
三宅桃子
原色の絵本のように着ぶくれて
霜夜はじめはつまようじ探していた
矢羽野智津子
手袋の甲の文鳥眠たさう
冬の海半島濡らす浅葱色
吉田悦花
脱げやすきスリッパ冬の長廊下
大年やバーテンダーに着替をり
岡田由季
たこつぼを心に仕舞ふ冬青空
冬の夜タイの寝釈迦の睫毛濃し
楠本奇蹄
元日に首を垂れる仕事かな
けだものら毛を恥じあひて初寝覚
こしのゆみこ
投函のはがきことりと初鳴す
初夢を結晶させて仕舞う箱
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