画鋲    吉野秀彦
 
  猫の毛の転がって来る涅槃西風 
  草萌ゆや漢民族の硬き頬
  落花して腹式呼吸のボクがいる
  鴉の子二酸化窒素へはばたけリ
  炎天や疾走の子らの加速
  光沢の背中東京カラスと申します
  夭折の君よコスモスは数え切れない 
  嬌声を走らせ少年少女居待月
  地下鉄の画鋲で留まる酉の市
  白足袋の氷踏むごと五指をおく




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