夏の雨
川田由美子

夕焚き火海の底にも降るひかり
離りゆく水の音して山眠る
我が身鳴る冬青草に屈む時
喪いしもの滑らかな弧よ瓜の花
はつなつの瞼を浸す野の遠さ
母翳るのこぎり草とさざ波と
夏の雨嬰児は巖のしずけさ
青濁る目薬しんと夏の菊
暮の秋吾子よ小さき火打ち石
冬木の芽足音ゆらすのは誰



【作句の風景】
黒衣の老女が小さな木橋を渡る。その先にある惨殺の悲劇。
ブレッソンの映画「ラル ジャン」。傍らの草は、軋りながら青を際だたせる。不可知の交差。
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