ベランダ眼球伝
中嶋憲武

闇の濃き民話の国や餅膨れ
車窓過ぐもののひとつに鬼火かな
北風をしまふ引き出し谷の森
口笛の自転車の籠葱と犬
睡るたび恋減りゆけり恋の猫
ベランダの電話の少女桜桃忌
白玉や嫌ひなものに偉人伝
眼球の凸面雲の峰に対す
硯洗ふ河馬の鼻先思ひつつ
くれなゐのハーブティー淹れ鵙高音



【作句の風景】
小学陸上競技大会の選手に選ばれた僕は、百メートルのダッシュを繰り返し、
とぼとぼスタート地点に戻る。前を歩く女子の太腿を見つめながら。
豆の木no.3indexへ トップページへ

inserted by FC2 system