への字
齋藤朝比古

麦踏みの一歩近づき少年院
山焼のふもと健康診断車
青空へ巣箱の闇を掛けておく
やはらかきところは濡れてかたつむり
梅雨長しマリオネットの四肢に糸
原爆の石へ天牛虫の髭
夏の雲空揉むやうに育ちけり
一輪車ねこじやらしにて反転す
猟銃のへの字に懸り父睡る
手を入れて靴磨きをり春隣



【作句の風景】
1.会社のトイレ。2.自室寝床。3.句会。詩の生まれそうにない処に、詩を求める。
この自虐的性癖は、俳句を創り続ける限り、治ることはないだろう。
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