森へ
田中亜美

節榑のふらここ少しだけ眠る
花冷えや鉱脈のやうにくるぶし
うるむのはやはらかい虚無蝸牛
ボスポラス海峡孤児のやうに未明
錯誤ただ美し森へ逢ひにゆく
刃こぼれのやうな生存天高し
チェホフの筆跡梳ひて銀杏は
秒速の雪よわたくしすこし敷く
ひたむきに雪の位相と暮らしをり
小春満ち来る目蓋閉ぢてもいい



【作句の風景】
表現することを「必須」にするのでもなければ「必要」とする訳でもない、
「必然」なのだと思いたい。とはいえ、締め切り前はいつも悲鳴(?)。要節煙。
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